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東京地方裁判所 平成12年(ワ)7459号 判決

原告 第一信用保証株式会社

右代表者代表取締役 池田尚春

右訴訟代理人弁護士 山近道宣

同 矢作健太郎

同 熊谷光喜

同 内田智

同 和田一雄

同 中尾正浩

被告 A

同 B

右二名訴訟代理人弁護士 椎名麻紗枝

主文

一  被告らは、原告に対し、各自金四億一五八三万七五八七円及び内金二億五〇六〇万九七〇八円に対する平成一二年六月二七日から支払済みまで年一四パーセントの割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

三  この判決は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

主文同旨

第二事案の概要

本件は、被告A(以下「被告A」という。)及び訴外第一生命保険相互会社(以下「訴外第一生命」という。)間の消費貸借契約に基づく被告Aの貸金返還債務について、被告A及び原告間の保証委託契約に基づき連帯保証した原告が、被告A及びその連帯保証人である被告B(以下「被告B」という。)に対し、各自、求償金残元金及び平成一二年六月二六日までの確定遅延損害金の合計金四億一五八三万七五八七円及び求償金残元金二億五〇六〇万九七〇八円に対する平成一二年六月二七日から支払済みまで年一四パーセントの割合による約定遅延損害金の支払を求めた事案である。

一  争いのない事実等

1  消費貸借契約

訴外第一生命は、平成三年六月四日、被告Aとの間で、以下の内容の金銭消費貸借契約(以下「本件消費貸借契約」という。)を締結し、これに基づき、被告に対して、金三億円を貸し渡した(争いがない)。

(一) 貸付金 金三億円

(二) 利息 年七・三九九二パーセント(月利〇・六一六六パーセント)

(三) 返済方法 被告Aは、訴外第一生命に対し、平成三年六月から平成三三年五月まで毎月二七日限り金二〇七万六九七五円を元利均等返済方式により返済し、最終回返済日に元利金残額を返済する。

(四) 特約 被告Aにおいて、右(三)記載の各返済日に元利金等の返済を遅延したときは、当然に期限の利益を失う。

(五) 損害金 年一四パーセント

2  保証委託契約

(一) 被告Aは、平成三年五月二九日、原告との間で、本件消費貸借契約に基づく被告Aの借入金返還債務について、保証委託契約(以下「本件保証委託契約」という。)を締結し、その中で、<1>原告は、被告Aが本件消費貸借契約に違反したため原告が訴外第一生命から保証債務の履行を求められたときは、被告Aに対し通知することなく代位弁済することができること、<2>原告が右の場合において、代位弁済したときは、被告Aは、原告に対し、求償債務として原告の出捐額及びこれに対する代位弁済の日の翌日から支払済みまで年一四パーセントの割合による遅延損害金を支払うことを約した(争いがない)。

(二) 被告Bは、同日、本件保証委託契約に基づく被告Aの原告に対する求償債務について連帯保証した(争いがない)。

3  抵当権設定契約

(一) 原告及び被告Aは、平成三年五月三〇日、被告Aの本件保証委託契約に基づく求償債務を担保するため、被告A所有の別紙物件目録一記載の土地(以下「本件土地」という。)につき抵当権設定契約を締結し、さらに、原告及び被告らは、平成四年七月二三日、被告Aの右求償債務及び被告Bの連帯保証債務を担保するため被告ら共有の同目録二記載の建物(以下「本件建物」という。)につき抵当権設定契約を締結(以下、本件土地及び本件建物についての抵当権設定契約を「本件抵当権設定契約」という。)した(争いがない)。

(二) 原告は、本件土地につき東京法務局豊島出張所平成三年五月三〇日受付第一一九〇〇号抵当権設定登記を、本件建物につき同出張所平成四年七月二三日受付第一四一六八号抵当権設定登記をそれぞれ経由した(争いがない)。

4  代位弁済

被告Aが本件消費貸借契約に基づく借入金返還債務の履行を遅滞したため、原告は、平成八年一月二九日、訴外第一生命に対し、保証債務の履行として、貸金残元本金二億七三九二万四九六四円、平成七年二月二八日から平成八年一月二七日までの約定利息金一〇四八万九六四四円、約定遅延損害金八九万九三〇五円の合計額から清算金八一万五三四八円を控除した残金二億八四四九万八五六五円を代位弁済した(甲第六号証、弁論の全趣旨)。

5  求償債務の一部支払等

(一) 被告Aは、平成八年二月九日から同年九月二六日まで別紙計算書記載のとおり、九回にわたり各金二〇万円ずつ合計金一八〇万円を支払い、原告は、これを求償金元金に充当した(争いがない)。

(二) 原告は、本件建物における抵当権に基づく物上代位として賃料の差押をし、平成八年一一月一五日から平成一二年五月一六日まで四二回にわたり別紙計算書記載の各金員の回収をし、求償金元金に充当した(争いがない)。

6  原被告ら間の訴訟等

(一) 原告は、東京地方裁判所に抵当権の実行として本件土地及び本件建物の競売を申し立てたところ、平成八年二月二六日、競売開始決定(同裁判所平成八年ケ第六三八号不動産競売事件)がなされた(争いがない)。

(二)(1)  被告らは、右競売手続の停止を目的として、東京地方裁判所に本件土地及び本件建物に設定した抵当権の実行禁止の仮処分を申し立てたところ、平成九年八月二九日、東京地方裁判所において、「原告は、本件土地及び本件建物に設定した抵当権を実行してはならない。原告の申立てによる本件土地及び本件建物に対する東京地方裁判所平成八年ケ第六三八号不動産競売手続は停止する。」との仮処分決定がなされた(甲八号証、弁論の全趣旨)。

(2)  原告は、右仮処分決定の取消を求め、保全異議を申し立てたところ、平成一〇年一一月一七日、東京地方裁判所は、右仮処分決定を取り消す旨の決定(東京地方裁判所平成一〇年モ第五〇八五九号仮処分保全異議申立事件)をした(甲第九号証、弁論の全趣旨)。

(3)  被告らは、右仮処分決定取消決定に対する保全抗告を申し立てたが、平成一一年七月一九日、東京高等裁判所において、右抗告を棄却する旨の決定(東京高等裁判所平成一〇年ラ第三〇三三号仮処分決定取消決定に対する保全抗告事件)がなされた(甲第一〇号証、弁論の全趣旨)。

(三) 被告らは、原告を相手方として、東京地方裁判所に本件土地につきなされた東京法務局豊島出張所平成三年五月三〇日受付第一一九〇〇号抵当権設定登記及び本件建物につきなされた同出張所平成四年七月二三日受付第一四一六八号抵当権設定登記の各抹消登記手続を求める内容の訴え(東京地方裁判所平成九年ワ第一〇七一七号土地建物抵当権設定登記抹消登記手続請求事件)を提起したところ、平成一〇年一〇月二〇日、被告らの請求を棄却する旨の判決が言い渡され、被告らは、これに対して控訴したが、平成一一年五月二七日、控訴審裁判所において、控訴棄却の判決(東京高等裁判所平成一〇年ネ第五六一八号土地建物抵当権設定登記抹消登記手続請求控訴事件)が言い渡され、被告らは、さらに上告したが、平成一一年一一月一二日、上告審において、上告を棄却する旨の決定(最高裁判所平成一一年オ第一一六一号事件)がなされた(甲第一ないし第三号証、弁論の全趣旨)。

二  当事者の主張

1  被告らの主張

被告らは、本件消費貸借契約に基づく借入金返還債務の返済原資として、本件建物からの賃料収入を考え、原告にもその旨計画書を提出していたところ、原告は、被告らから提出された返済計画では、賃料の設定その他に無理があり、返済は困難であると判断したため、被告Bの給与収入も加算するなど返済計画を変更して、融資の審査を行い、融資を決定したものである。

これは、被告らに対し、重大な情報を秘匿したものであり、原告が被告らに情報を開示していたならば、被告らは、被告らの賃料収入で返済できないような過剰な融資を訴外第一生命から受けることはなかった。被告らは、原告の右秘匿行為に基づき、被告らの返済能力を超える過剰融資相当部分の損害を被るにいたった。

よって、被告らは、原告に対し、原告の右秘匿行為を内容とする不法行為に基づく損害賠償請求権を自働債権として、原告の本訴請求権と対当額で相殺する。

2  原告の主張

被告らの右主張は、前訴及び保全事件において既に争われ、裁判所により判断がなされている争点を蒸し返すことに等しく、信義則に反する。

第三当裁判所の判断

一1  甲第一ないし第三号証によれば、(一)被告らは、原告との間の前記第二、一、6、(三)の前訴において、既に、本件保証委託契約の錯誤無効のほかに、原告の債務不履行を理由として本件保証委託契約を解除した旨の主張をしていたこと、(二)被告らは、原告の債務不履行の内容として、第一審において、本件保証委託契約に先立ち、金融の専門家として、<1>融資の目的が適切、妥当なものか、<2>被告らの返済能力との関係で、債務返済原資とされる賃料収入が充分かどうか、<3>担保の目的物の評価が融資金額との関係で充分かどうかの少なくとも三点について、被告らに対し、事業計画案を提出させ、あるいは自ら資料を収集したうえで、それらに基づいて適切な判断を下すことによって、被告らが融資を受けたために損害を被らないように注意を払う保護義務があったにもかかわらず、右義務に反して、何らの審査もしないまま、本件保証委託契約を締結した(その結果、被告らは、本件消費貸借契約に基づく借入金返還債務の履行ができない状況に陥った。)という主張をしていたこと、(三)控訴審において、被告らは、右保護義務違反の内容として、本件消費貸借契約締結の準備が第三者を通じて改ざんされた内容の資料を入手したうえでなされており、原告としては、被告ら本人から入手した資料に基づかないで融資手続をすすめる以上、原告が直接被告らと面談する機会において、資料の成立及び内容の真正を確認するべき保護義務があったが、その確認をしなかった旨の主張を追加したこと、(四)前記控訴審判決においては、右保護義務の存在自体を否定する判断がなされたこと、の各事実が認められる。

2  また、甲第九、第一〇号証、弁論の全趣旨によれば、(一)被告らは、原告との間の前記第二、一、6、(二)の保全異議申立事件及びその保全抗告事件においても、前訴と同趣旨の主張をしており、かかる主張は、右保全異議申立事件の決定及び右保全抗告事件の決定においても、理由がないものとの判断が下されたことが認められる。

二  ところで、被告らの主張は、前記第二、二のとおりであって、その内容は、被告の不法行為の具体的内容、被告らの被った損害額の点のほか、被告らが本件消費貸借契約を締結した相手方が原告ではなく訴外第一生命であって融資をしたのは原告ではないのであるから、仮に、被告らに訴外第一生命に対して不法行為に基づく損害賠償請求権があるとして、これをもって原告の本件求償債権と相殺することが何故にできるのか等の点について不明確な点が存在することは否定できないが、かかる点についての検討をしばらく置いても、被告らの右主張は、前記一に認定したとおり、前訴や前記保全異議申立事件及び保全抗告事件において、原告及び被告ら間で既に実質的に争われた争点について、形をかえて蒸し返すものに等しいと言わざるを得ず、被告らが本件において、再度、右主張を繰り返すこと自体著しく信義に反するものであり、当裁判所は、右被告らの主張について、再度、審理する要をみない。

三  以上によれば、原告の請求は理由があるから、これを認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第六一条を、仮執行宣言につき同法第二五九条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 片山憲一)

物件目録

一 所在 豊島区上池袋三丁目

地番 二三四四番四

地目 宅地

地積 一八一・四一平方メートル

二 一棟の建物の表示

所在 豊島区上池袋三丁目二三四四番地四

構造 鉄筋コンクリート造陸屋根六階建

床面積 一階 一二三・六九平方メートル

二階 一三七・五二平方メートル

三階 一三六・二六平方メートル

四階  八六・八九平方メートル

五階  八六・八九平方メートル

六階  八一・六五平方メートル

1 占有部分の建物の表示

家屋番号 豊島区上池袋三丁目二三四四番四の一

種類 店舗 事務所 居宅

構造 鉄筋コンクリート造五階建

床面積 一階 一〇一・九八平方メートル

二階 一二五・一四平方メートル

三階 一二六・四二平方メートル

四階  七七・七六平方メートル

五階  七七・七六平方メートル

2 占有部分の建物の表示

家屋番号 豊島区上池袋三丁目二三四四番四の二

種類 居宅

構造 鉄筋コンクリート造一階建

床面積 六階部分 七二・九九平方メートル

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